使用済み核燃料
 東北地方、青森県の六ヶ所村には使用済み核燃料の中間処理施設がある。東京電力のある社員が単身、地域に住み込み命をけずる思いで説得、ようやく地域のかたに設置を許可して頂いた施設である。今頃はおそらく雪に埋もれているだろう、しかし残念ながらかねてから危険性を指摘されてきた。
  六ヶ所村の中間貯蔵施設は、ほぼ満杯の状態で約3000トンの使用済み燃料棒と超高濃度の放射能廃液240立方メートルがタンクの中で貯蔵されている。
  すでにタンクも老朽化していて、震度7クラスの大地震が北海道・青森沖で生じたら、タンクから直ちに大変な量のセシウム、プルトニウムなどが流出する危険がある。この超高濃度放射能廃液のガラス固化作業を一刻も早く始めなければ、容易に悲惨な状態が予測される。
ところが、日本ではガラス固化作業は一向に進んでいない。
  今急がれるのは、全国各地の原発基地にそのままプールに保管されている使用済燃料棒を、直ちに乾式の保管に入れ替えてしまうことだ。事故のあった福島第一原発でもモデル的に乾式の保管もなされていた。
  報道されていないが、その乾式保管の燃料棒は、あれだけの津波、地震に見舞われても大丈夫だった。

  写真も見せていただいたが、大きなステンレス製らしい筒に入っていて横倒しになっていた。それ以来乾式の保管に大変興味を持った。米国の物理学者で核拡散の専門家フランク・フォンヒッペルさんとゴードン・トンプソンさんのお話では
「日本の場合はプールで使用済燃料棒を冷却して5年もすれば、取り出して乾式で保管できる」「そのほうが安全である」ということである。

 全国各地にある原発基地の5年を経過した使用済燃料棒を早く集めて、どこか一箇所で乾式の保管したほうが、危ういプールによる水の保管よりはるかに安全ということになる。

  六ヶ所村の中間貯蔵施設はすでに満杯で、新たな燃料棒を保管する余裕はない。新たな中間貯蔵施設を探すにしても、福島原発の事故があった現在では、どこも受け入れてくれる所はないだろう。国民は福島の事故を見て身にしみてその怖さを感じている。
  今、全国にある58基の原子力発電所はそれぞれに広大な敷地を保有している。
そこに最大震度の地震や最大の津波、台風などの自然災害、またテロへの対策も施して万全の態勢で建物を建築し、最終処理施設ができるまでの間、自らの原子炉で生じた使用済み燃料棒だけでも乾式で保管を始めるべきではないだろうか。
 原子力発電所の事故以来,国民は内心不安に思っている。
住民もこれまでのプールによる冷却よりも安心できるので同意を得られやすい。

「大地震と津波災害に強い使用済燃料棒の乾式保管施設をそれぞれの原子力発電所内に新たに作るとしたら、その費用は約2兆円、しかも狭い場所でも大丈夫だということである。」

  それなら、各電力会社が積み立ててきた3兆円の原子力環境整備促進・資金管理センター再処理積立金がそのまま残っている。それを取り崩して、事故が起こる前に使用済燃料棒の乾式保管施設を作ることが先決である。
核を封じ込めてしまう根本的な対策にはならないが当面の対策としてできる最良の策と考えられる。
 原発の再稼動を巡る議論の前に、やるべきことがある。例年にない大雪の中、北陸、東北、北海道の原子力発電所では、使用済燃料棒は静かにひっそりと待っている。
六ヶ所村はあくまでも中間貯蔵施設である。
核廃棄物の最終保管方法や場所は決まっていない。


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